不動産について税理士が助言
2023/09/30
個人が不動産を売却したりするときには、売却益に対して所得税が課税されます。また、不動産の売却益に対して一定の要件等を満たしているものについては、特別控除など税額が軽減される特例制度が設けられていますが、税金の知識が不足している場合、使えると思っていた特例制度が使えずに、思わぬ税金の支払いが発生することもあります。そこで、個人が不動産を売却した際の税金や注意点を解説します。
目次
不動産の売却に関する税金
不動産の売買において、個人が土地等の不動産を売却して得た利益は譲渡所得といい、所得税・住民税が課税されます。不動産の譲渡所得は、他の所得、例えば給与所得などと合計せず、分離して計算する分離課税制度が採用されております。次に、一般的な譲渡所得の計算は、収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額=課税譲渡所得金額となります。また、譲渡所得は所有期間によって長期と短期に区分されて、長期譲渡所得と短期譲渡所得では課税所得に対する税率が異なります。譲渡所得は不動産を売却した際の売却益に対して課税されるもので、購入した金額よりもはるかに低い価額で売却し損失が出ている場合には、税金が課税されることはありません。
収入金額は、一般的には、売買価格と売買に伴う固定資産税の清算金の合計額となります。
取得費は、取得に要した費用の合計額で、一般的には、売却した不動産の購入金額、購入時に支払った仲介手数料、登記費用、不動産取得税などがあります。
譲渡費用は、売却に際して直接要した費用の合計額で、一般的には、仲介手数料、登記費用、測量費、立退料などがあります。
特別控除額は、売却した不動産の利用状況によって適用されるもので、さまざまな特例制度が設けられています。代表例として、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例があります。この特例制度は、一定の要件を満たしている場合にのみ適用されるため、一つでも要件を満たしていないとなれば適用できず、税負担が大きく違うため、特例に該当するか否かは税務署や税理士などに確認すると良いと思います。
長期と短期の区分は、売却した不動産が売却した年の1月1日現在で所有期間が5年を超えるものが長期譲渡となり、不動産を売却した年の1月1日現在で所有期間が5年以下のものを短期譲渡と区分されます。課税譲渡所得金額に対して、長期譲渡は20%(国税15%、住民税5%)、短期譲渡39%(国税30%、住民税9%)で税額を計算します。
譲渡所得の特別控除
先に示しましたとおり、譲渡所得には税負担を軽減させるさまざまな特例制度が設けられていますが、特例制度が適用できるか否かは、それぞれの特例制度ごとに細かく定められている一定の要件を満たしている必要があります。ここですべての特例を紹介することはできないので、ご自身の不動産売買にはどのような特例が適用できるかは税務署や税理士に確認していただくして、ここでは、もっともよく使われているケースとして、居住用財産の3,000万円控除の概要と適用要件などについて解説します。
特例の概要
居住用不動産を売却した場合、長期短期の区別に関係なく、譲渡所得から最高3,000万円を控除するものであり、具体的な例として、10年前に1,000万円で購入し、ご自身が住んでいた土地建物を3,000万円で売却した場合、売却額3,000万円から購入額1,000万円を引いた2,000万円が売却益となり、これに対して所得税が課税されますが、ご自身が住んでいた不動産であることから売却益2,000万円から特別控除額最高で3,000万円を控除するので、課税所得は0円となり所得税が課税されないという特例制度になります。
特例適用の要件
(1)自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地を売ること。なお、以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
(注)住んでいた家屋または住まなくなった家屋を取り壊した場合は、次の2つの要件すべてに当てはまることが必要です。
イ その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売るこ
と。
ロ 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと。
(2)売った年の前年および前々年にこの特例(「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」によりこの特例の適用を受けている場合を除きます。)または居住用の譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。
(3)売った年、その前年および前々年に居住用の買換えや居住用交換の特例の適用を受けていないこと。
(4)売った家屋や敷地等について、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。
(5)災害によって滅失した家屋の場合は、その敷地を住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
(6)売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと。
この特別な関係には、このほか生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。
注意事項
居住していた不動産を売却したことで新たに居住用不動産を購入して居住されるケースも多いと思われますが、その際の注意点として次のようなものがあります。
(特定増改築等)住宅借入金等特別控除または認定住宅新築等特別税額控除については、入居した年、その前年または前々年に、このマイホームを売ったときの特例の適用を受けた場合には、その適用を受けることはできません。
また、入居した年の翌年から3年目までのいずれかの年中に、(特定増改築等)住宅借入金等特別控除の対象となる資産以外の資産を譲渡し、この特例の適用を受ける場合にも、(特定増改築等)住宅借入金等特別控除の適用を受けることはできません。
譲渡所得の申告と納税
不動産を売却して売却益が生じた場合は申告と納税が必要となります。また、特例制度を適用して納付税額がない場合でも特例制度を適用する旨の申告が必要になるケースもあります。
不動産の売却による譲渡所得は、一般の所得税の確定申告により行うこととなります。確定申告の期間は1年間の所得を翌年の2月16日から3月15日の間に行いますので、譲渡所得も不動産を売却した年の翌年2月16日から3月15日の間に申告と納材の期限となります。
譲渡所得の確定申告の際には、譲渡所得以外の他の所得も1枚の確定申告書に記載するので、給与所得がある方は会社から交付された源泉徴収票や事業所得がある方は、決算書(収支内訳書)を事前に準備する必要があります。また、譲渡所得の申告には、譲渡所得の内訳書を添付する必要があるほか、特例制度を適用する場合は、特例ごとで定められた登記簿謄本などの添付書類が必要となりますので、それを事前に準備する必要があります。
ご自身の譲渡所得に申告でどのような添付書類が必要かや譲渡所得の内訳書の書き方がわからない場合は、税務署や税理士に問い合わせるようにしましょう。